居宅療養管理とは?医療保険の基礎知識Q&A

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医療保険ではない居宅療養管理

医療保険での適用を模索する人も多い居宅療養管理。その内実とは?

知らない人も多いですが、居宅療養管理は介護保険の枠組みで運用されています。医師が診察をする訪問診療などと違い、療養のアドバイスを行うための制度なので、明確に分けられています。居宅療養管理について確認してみてください。

居宅療養管理が医療保険ではなく介護保険である理由は?

居宅療養管理とは、病院へ通院することが困難な要支援、要介護の利用者のため、病院の医師や薬剤師などがその利用者の居宅を訪問し、療養上の管理や指導、助言をおこなうことをいいます。
居宅療養管理は、医療保険の往診や訪問診療とよく混同されてしまうのですが医療保険ではなく介護保険の管轄となります。
居宅療養管理も往診も、医師が利用者の居宅を訪問するのは変わりがないのに介護保険と医療保険と区分を分けている理由はいったい何なのでしょうか。
それは、医師が診療をおこなうのか療養上のアドバイスをおこなうのかで大きく違いが出てきます。医師から患者への注射や投薬といった直接的な治療にあたる部分は医療保険の管轄となり、診療報酬も医療保険点数の中から算出されることになります。
一方、居宅療養管理は療養上のアドバイスで治療ではありません。受けられるのは介護保険の認定を受けている要支援、要介護者に限られ診療報酬も介護保険点数の中から算出されます。居宅療養管理は医師だけに限らず、薬剤師や管理栄養士、歯科衛生士がおこなう場合もあります。

居宅療養管理の費用相場と介護保険と医療保険の適用範囲

居宅療養管理の費用相場ですが、次のようになります。

居宅療養をおこなった人 1割負担1回につき(円)
医師・歯科医師 507
病院・診療所の薬剤師 558
薬局の薬剤師 507
管理栄養士 537
歯科衛生士 355
保健師・看護師 ※2018年度廃止

※この表は、2018年度介護報酬改正として厚生労働省が発表したものの中から、「単一建物居住者が1人」の場合を抜粋して作成したものです。

「単一建物居住者」というのは、暦月1ヶ月あたりにひとつの建物内で居宅療養管理をおこなった利用者のことを指します。例えば、要介護3の利用者1人が、暦月の1月中に自宅において医師による居宅療養管理の指導を1回おこなったという場合は、これに当たります。
この表から見てとれるとおり、医師が居宅療養管理をおこなった場合は1割負担で507円となり、思ったより高額ではないことがわかります。(但し、別途に院外処方の薬剤費がかかることがあります。)
しかも居宅療養管理は、医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士によって回数制限が設けられていて、医師の場合だと月2回までとなっています。そうなると、かかる費用が1,013円未満となります。もし、やむを得ずそれ以上おこなわなくてはいけなくなった場合は、介護保険ではなく医療保険が適応されるか、自費で計算されることになります。
介護報酬の算出は、厚生労働省が定めた介護サービスごとの単位というものを使って月単位で計算します。その月で利用した介護サービスの単位をすべて合算し、1~2割の負担割合をかけて数字を出します。
ただこの単位も、要介護1や要介護2など段階によって月の使用限度が決められているので、オーバーしてしまうと自費計算となってしまいます。

2018年の法改正により同一建物居住者から単一建物居住者へ変更した理由

上記で述べた「単一建物居住者」は、2018年の厚生労働省の法改正により新しく発表されたものです。これまでは、「同一建物居住者」と称した名目で告示されていました。この2つの違いと、変更した理由について少し解説していきます。

  • 同一建物居住者…ひとつの建物内で居宅療養管理をおこなった患者。
  • 単一建物居住者…暦月1ヶ月あたりに、ひとつの建物内で居宅療養管理をおこなった患者。

同じグループホームに訪問する医師が、患者AさんとBさんについて居宅療養管理をおこなった場合で例えてみます。従来の「同一建物居住者」だと、AさんとBさんを同じ日に訪問した場合は、2人のまとめた点数で算定されていましたが、別日になると、それぞれ1人ずつの別々の点数で算定しなくてはいけないといった不具合が招じていました。
同日の訪問で複数診るより、別日でバラバラに診た方が点数が高く取れるといった矛盾が発生していたのです。
そこで、「単一建物居住者」で、暦月1ヶ月あたりという括りを設けることで、別日に訪問しても、そのグループホーム内で診た患者であれば、まとめた人数で算定できるようになったのです。

居宅療養管理の利用方法とは

居宅療養管理の利用方法は次のとおりとなります。

  1. まずは担当のケアマネージャーに相談します。
  2. サービスの利用が決定したら、ケアマネージャーが居宅療養管理をおこなってくれる担当の医師や薬剤師、歯科衛生士などを探し、連絡をします。
  3. 連絡を受けた担当の医師や薬剤師、歯科衛生士などは、直接本人に連絡をして、訪問が可能かどうかの意志を伺います。
  4. サービスが決定したら、利用する人の状態を考慮しながら、訪問する頻度や回数などをケアマネージャーを通して具体的に決めていきます。

医療保険と介護保険の給付調整について

要介護や要支援の被保険者が、民間の医療サービスを受けるとき、医療保険からの給付になる場合と介護保険からの給付になる場合とが、一緒になってしまうことがあります。
例えば、通常の健康医療保険のみで、歯科衛生士による訪問診療を受けていた人がいたとします。ところが月の途中から要介護被保険者となり、医療保険から介護保険である居宅療養管理へ変更になってしまったというケースです。
こういった場合、いったいどちらの給付を受けることになるのか、厚生労働省は次のように注意を促しています。

  1. 医療保険の在宅医療と介護保険の指定居宅サービスの同一日算定は認められない。
  2. 歯科衛生士がおこなう医療保険の訪問歯科衛生指導と介護保険の居宅療養管理は、同一の医療機関においてそれぞれ月4回まで。
  3. 途中で要介護に変更した場合は、同一の医療機関において、両方の保険給付を合算し制限回数を考慮する。

つまり、医療保険から介護保険に変更した時点で、同一の医療機関であったとしても介護保険の給付に変更となり、平行線ではおこなえないということです。

※平成18年に厚生労働省が、医療保険と介護保険の給付調整についての注意事項を発表しました。
参照元:厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び 医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」

2018年看護師の居宅療養管理廃止について

上記の表からお気づきの人も多いかもしれませんが、2018年厚生労働省は、看護師による居宅療養管理を廃止する方針を発表しました。
従来の看護師の居宅療養管理は6ヶ月に2回までしか算定できないという厳しい制限が設けられていたため、ほかの医者や歯科衛生士などと比べて看護師は算定実績が極めて低い状態にありました。
そのことを理由に、廃止の方向へ繋がったというわけなのですが、現在使っているところもあるといった声もあがっているため、段階を踏んで廃止までに一定期間の経過的措置を設定するとのことです。

居宅療養管理と医療保険と合わせて安心できる療養生活を

何かと改正が多い居宅療養管理ですが、本当の目的は病院に通うことが困難な要介護者が安心した療養生活を営むことにあります。私たちは、居宅療養管理と医療保険のサービスを上手に利用するためにサービスの内容を知っていく必要があるのです。